手術の傷あとを治したい
傷が赤いままで痛いし痒い
傷あとが白かったり茶色くで目立つので改善したい
このような悩みを解決していきます。
形成外科医専門医として普段から創傷の治療を行なっている私が解説していきます。私がどんな人か気になる方はこちらのプロフィール記事を参考にしてみてください。
傷あとのケアは心のケアです。
命を救うことはもちろんのこと、機能面や整容面、心の問題までも解決に力を入れてきたのが「形成外科」です。
形成外科という診療科は傷あとをキレイにすることを常に考えています。
創傷治癒の観点から傷を消すことは不可能ですが、
目立たない傷あとにすることは可能です。
諦めずに形成外科で相談してみましょう。
それでは宜しくお願い致します。
質問や要望などなんでもお気軽にご相談ください✨
ブログの問い合わせやTwitterにご連絡お願いします。
傷あとの治療は消火作業である
盛り上がった傷(肥厚性瘢痕やケロイド)は真皮網状層における慢性炎症が原因です。
つまり、盛り上がった傷は真皮網状層の創傷治癒過程の異常なのです。
通常は減弱していく炎症が種々の理由で続いてしまう状態のことを肥厚性瘢痕やケロイドと呼びます。
その炎症の遅延によって、肥厚性瘢痕やケロイドが発症します。
また、炎症が持続すると血管新生や膠原線維の産生が持続するため、赤く隆起した病変となり、炎症が強いと疼痛や掻痒感などの症状が生じます。
炎症が悪化・遅延する原因としては
局所因子
・物理的刺激(張力)
・創傷治癒遷延(傷の治癒にかかる時間)
・傷の深さ
・生活習慣(過度の飲酒、長時間の入浴、激しい運動)など
全身因子
・ホルモン(妊娠、思春期)
・高血圧
・全身の炎症(大きさな外傷や熱傷、手術など)
・遺伝的因子など
炎症を火事と考えるとケロイド・肥厚性瘢痕の治療は消火作業と例えることができます。
つまり、上記の炎症が遅延する原因は火に油を注ぐいでいることになります。
まずはその原因を改善したうえで、消火作業を開始していきます。
・大火事に対してはブルドーザーや消防車で消火作業を行います
・火の勢いが収まれば、ジョウロやバケツで火を完全に消します
・また、焼け跡(目立つ瘢痕)が目立つのであれば瘢痕修正術(瘢痕を切除する手術)やフラクショナルレーザー、リハビリメイクなどの方法があリます
それぞれの治療方法の解説
安静・圧迫・固定療法
皮膚にかかる張力を減らし、盛り上がりやひきつれのない成熟瘢痕(傷あと)へと導くことが目的です
特に形成して間もない傷あとに効果的です
傷あととは傷が完全に治った状態のことをいいます。
紙テープ(ニチバンサージカルテープ、3Mマイクロポアサージカルテープ、アトファインなど)
傷に直角に、つまり傷を拡げる方向に対抗するようにテーピングを行います
傷を引き離す方向への外力を放置しておくと、幅の広い目立つ傷あとになってしまいます
また、擦れや紫外線などの外的刺激からも保護することができます
○ 3M マイクロポアサージカルテープ
肌色タイプで、貼ってもほとんど目立たないため、特に顔に貼る場合は有用です。
紫外線透過率を低く抑えられるメリットもあります。
幅が広いものは体幹や四肢に、幅の細いものは顔に使うことが多いです。
○ ニチバン アトファイン
アトファインは縦方向にも横方向にも伸縮しないので、傷が引っ張られる方向を考えて貼る必要がないため有用です。
傷に直交するように貼ることがわからない場合や困難な場合はアトファインの使用がよいでしょう。
また、サイズのバリエーションも多彩なため様々の手術痕にもご使用いただけます。
シリコンテープ(メピタック®︎、3Mやさしく剥がせるシリコンテープなど)
紙テープよりやや高価ですが、シリコンテープは表皮障害や接触性皮膚炎を生じることが少ないです
シリコンジェルシートと比べて薄くて硬いことが特徴です
○ メンリッケヘルスケア メピタック®︎
皮膚にやさしいソフトシリコンの固定用テープです。
創部接触層にセーフタックテクノロジーが使われているため、しっかりと固定しながら、テープ交換時の痛みや皮膚の組織損傷を軽減します。
○ 3M やさしくはがせるシリコンテープ
シリコンジェルシート(エラシード、シカケア、レディケア)
シリコンテープより柔らかくて厚いことが特徴です
ジェルシートはお風呂に入るたびに剥がして一緒に洗うと粘着力が戻るため、繰り返し使用できます
あまり安価なものは粘着力がなくなるまでの時間が短いため注意が必要です
○ スミス・アンド・ネフュー シカケア
やわらかく粘着性のあるシリコンジェルシートです。
耐久性があり、型崩れせず、洗って繰り返し使用できて経済的です。
適用部分の大きさにカットして使用することが可能です。
○ ギネマム レディケア
手術痕のケアに特化した製品シリーズが特徴的です。
大きさ切開用や小さな切開用、また紫外線をカットする製品もあります。
その他、スポンジ素材であるレストンやエラストン、固定する力を高めた素材であるピタシート®︎などがあります
関節部ではサポーターや包帯などを併用すると局所の安静が保ちやすいです
内服薬
トラニスト(リザベン®︎)が保険適用で使用できます
炎症による化学伝達物質(ケミカルメディエーター)を抑制し、掻痒感の改善や病変自体の鎮静化を期待します
保険適用外ではあるが漢方薬の柴苓湯も炎症を軽減する効果があるとされています
重症な症例では、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の内服も考慮されます
外用薬
炎症の軽減目的に副腎皮質ホルモン含有軟膏(ステロイド軟膏)を使用します。
適宜、ヘパリン類似物質(ヒルドイド軟膏やクリーム)などへの変更を考慮します
さらに効果を期待するならば副腎皮質ホルモンテープ剤があり、ドレニゾン®︎テープ(効果が弱い)とエクラー®︎プラスター(効果が強い)が使用可能です
注射薬
副腎皮質ホルモン剤であるトリアムシノロンアセニド(ケナコルト®︎)があります
注入時に痛みがありますが、早期の改善を望むのであれば注射薬は効果的です
手術療法
目立つ瘢痕や皮膚の引きつれ(瘢痕拘縮)を改善する場合などが積極的な手術の適応となります
ただし、特にケロイド体質の関与が強く疑われる場合は、術後の放射線治療の併用が必須となります
放射線治療
血管新生を抑え、過剰な炎症を抑制する効果があります
特にケロイド(炎症が強い)は単に手術するだけでは再発のリスクが高いために、術後に放射線治療を併用する必要があります
フラクショナルレーザー
成熟した瘢痕(赤みつまり炎症がない)に適応があるが、効果は劇的ではないため、治療回数が多く必要となります
また、自費診療となるため費用がかかります
傷がぼやけたり、凹凸を改善したり、表面の質感(テクスチャー)の改善が期待できます
メイクアップセラピー
リハビリメイクやメンタルメイクセラピーとも言われます
特殊なメディカルメイクによって傷跡を隠すことができます
傷跡の治療には時間がかかるため、その間の精神的な苦痛への配慮としても効果的です
まとめ
いかがでしょうか。
傷は治ってしまえばおしまいではなく、傷あとのケアも行うことも治療の一貫なのです。
傷あとのケアにまでも力を入れているのが形成外科です。
綺麗に傷を治し、見た目をもよくすることは形成外科医にかされた使命なのです。
他の科で手術した傷あとでも困ったことがあれば是非一度形成外科に相談してみてください。
最後まで読んでいただき誠に有難うございました。
その他質問や相談などがあればお気軽にブログの問い合わせやtwitterまで連絡いただければお答えさせていただきます
コメント