ケガをしたら何科を受診したらいいの?
ケガをしたら病院へいくべき?
病院へいくまでに自分でできることはなにかある?
こういった疑問にお答えします。
形成外科専門医として普段、創傷(傷)の診察をしているita_runが解説していきます。
「ケガをしたらまずは形成外科に行った方がいい」
これがみなさんの常識的な感覚になるように、啓蒙できれば幸いです。
ケガをしたらまずは形成外科を受診しよう
ケガをしたらまずは形成外科を受診しよう。
注意:ここでいうケガとは体表のケガです。骨折を疑う場合などは整形外科の受診でOKです。
理由 ① 創傷(傷)の治療をメインにしているため経験が豊富であるから ② 乳房再建やマイクロサージャリー、小児の先天奇形などにも精 通しているため手技が細やかで、整容面への配慮があるから ③ 傷が治癒したら終わりではなく、傷に対する後療法や瘢痕修正 術など手段が豊富であるから
理由の①〜③を具体例を用いて解説していきます。
例① 形成外科がある病院では体表の外傷は形成外科医が診ています。
その他、褥瘡(床ずれ)や足潰瘍などの慢性創傷(傷)も診ているため、傷に関しては経験が豊富です。
例② 体表の手術では結果が目にみえるため、ごまかしはききません。
つまり、常に整容面への配慮が必須となります。
また、「ほかの診療科も行っている形成外科の手技(切開、縫合、皮膚腫瘍摘出、植皮など)
において形成外科が一番でないと、われわれの未来はない。」との格言があるように、
些細な手技ひとつにしても洗練されています。
例③ 傷は術後のフォロー(後療法)が重要です。
テーピングや遮光などがあり、肥厚性瘢痕やケロイドなどの合併症を伴った場合は、
放射線治療、色素レーザー治療やステロイド治療の対処も可能です。
瘢痕修正に関しては、再縫縮(単純縫縮、Zplasty、Wplasty)、植皮術、皮弁術などの
方法があります。
確かに形成外科がどのような疾患を扱っているのかなどまったく世間に知られていないのが実情です。
また、形成外科がある病院は多いとは言えません。
だからこそ、この記事で少しでもみなさんに形成外科の存在を知ってもらえれば幸いです。
結論ですが、
怪我をしたらまずは形成外科を受診しよう。
(骨折を疑う場合などは整形外科の受診でOKです)
ケガをして病院受診を迷われている方へ
- 整容面を気にする場合
- 出血している場合やパックリした傷(黄色い脂肪が見える)は縫合することが多い
- 治らない傷・治りにくい傷、感染徴候(発赤、腫脹、疼痛、熱感)がある場合
- 指のケガ(神経血管束、腱損傷)、顔面のケガ(顔面骨、顔面神経や耳下腺などの損傷)、眼瞼周囲のケガ(挙筋腱膜や涙小管の損傷)などの特殊部位のケガ
上記のように病院受診を勧める状況は多数あり、
ケガした時にはそのような判断の余裕もないため、
基本的に迷う場合は病院受診をしましょうと言うことしかできません。
心配で受診してきた患者を無下に扱ったり、嫌な顔をする医師はいないはずです。
病院へ行くまでに自宅でできること
怪我をした場合にまず出来ることは、傷の洗浄です。
傷表面の細菌数を減らし感染率を下げることにくわえ、
異物による外傷性刺青を防ぐことにもなります。
この際、傷の消毒はしてはいけません。
なぜならば、正常の組織や細胞にも障害を与えるため、
創傷治癒遷延(傷が治りにくくなる)につながります。
傷の洗浄は水道水で十分です。泡は自宅にある手洗いやボディー用の泡で十分です。
(日本の水道水は無菌ではないものの、WHOの定める飲料水水質ガイドラインを
十分に満たしているし、世界各国の水道水と比較しても日本のそれは十分にきれいである)
次に、出血している場合は、創部を直接圧迫してください。
心臓より高く挙上するとなおよいでしょう。
最後に、キズパワーパッドやラップ療法などは十分な注意が必要です。
湿潤環境を保つという意味ではすごく有用な方法ではありますが、
細菌を閉じ込めたり、過度な浸出液により感染が誘発される危険性があります。
まとめ
外来診療をしていると、形成外科というと整形外科と勘違いされることが多くあります。
その場合は、「美容外科はご存知ですか」というとそれならば知っています、と。
形成外科とは?という問いに対しては下に参考記事を載せておきます。
形成外科は
「マイナスをゼロに近づける」
美容皮膚科や美容外科は
「ゼロをプラスに近づける」
どちらもプラスのベクトルであり、我々の生活の質に与える影響は非常に大きなものがある
と思います。
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